カテゴリー
タグ

by 渡部元吾

避難所生活の睡眠。慣れない環境で眠れない方へ

この度の西日本豪雨により被害を受けられた全ての皆様に心よりお見舞い申し上げます。
発生から3週間が過ぎようとしていますが、まだまだ復興の目処がたたない状態です。

そして、大勢の方が自宅に住むことがままならず、避難所に身を寄せていらっしゃいます。
避難所には多くの人が集まり静けさとはかけ離れた、以前とは全く違う睡眠環境で眠らなければなりません。
被災後の恐怖やストレス、将来に対する不安や抑うつ感のために不眠の症状に悩まされる方も少なくないでしょう。
このような過酷な状況下でも、少しでも休息をとり体力を回復させて前に向かって進んでいただくために、避難所での不眠対策をまとめてみました。固い床の上で眠らなければならない方の不眠症状の改善に繋がることを微力ながら願っています。

被災後の不眠には理由があります

過酷な災害を経験した後や、命の危険を感じるような状況にある場合、私たちの体はいつでも避難行動に移ることができるように神経は緊張状態に保たれていて眠りにくくなっています。生命を維持するためにぐっすり眠って体を休めることは大切ですが、今は危険から身を守ることの方を本能的に脳が優先しているのです。

また、睡眠には脳と体を休めて疲労を回復させるだけでなく、経験したことを記憶として永く強く脳に定着させるという役割もあります。あまりにもショッキングな辛い体験をした後などに不眠に陥るのは、その後の心身への影響を最低限に抑えるために記憶の定着を防いでいるためと言われています。被災体験を思い出した時に蘇る恐怖やストレスを和らげて生活を前に進めるため、私たちの心身を守るために不眠になるのです。

大きな自然災害を経験して脳が興奮状態にある時は「眠れないのが当たり前である」ということを残念ですが認識してください。そして、避難所で眠れないことを気にして思い悩むよりも、被災後不眠になるのは人間に備わった防御本能であると割り切ってみてください。
視点を変えて「眠れないのは当たり前である」という考え方を認識することによって、不眠に対する不安やストレスが軽減されるかもしれません。そして多少なりとも気持ちが楽になって被災者の方が少しでも眠れることを切に願います。

次に、避難所で少しでも気持ちよく眠るためのポイントをまとめてみました。

避難所で眠るための工夫

固い避難所の床を少しでも柔らかく

体育館や公民館などの床の上で眠らなければならない場合、とにかく色々なものを敷いて少しでも寝床を柔らかくしてください。ダンボールや毛布、スポンジシートや発泡スチロール、運動マットや球技のネットなど何でも利用しましょう。
中でも、支援物資の到着などで手に入りやすいダンボールはクッション性・断熱性があって非常時の敷物にお勧めです。
寝床が固いままで眠ることは不可能です。ぜひ色々なものを利用し工夫して、少しでも柔らかくして眠ってください。

横を向いて寝ましょう

快眠できる正しい寝姿勢は仰向け寝なのですが、固い床の上で眠らなければならない場合上を向いて寝ることは不可能です。横向き寝の方が腰にかかる負担が少なく、多少楽に眠れるはずです。
そして、横向き寝をする場合には何かを丸めて抱き枕を作って使用してください。肩や腰骨に集中する体圧が分散され痛みが軽減されて楽に眠れるでしょう。

夜は周りからの視線を避ける

避難所では一日中人目にさらされています。注目されているわけではないとわかっていても、この状況は精神的、肉体的にかなり疲れます。夜眠る時ぐらいは周囲の人たちから見えないように、ダンボールの衝立や布などで人目を遮るようにしましょう。

なるべく暗くする工夫を

眠るためにはできるだけ避難所を暗くするのが望ましいのですが、大勢の方の安全のために真っ暗にはできません。眠れない時はアイマスクを使ってみてください。ハンカチやタオルなどでも代用してみましょう。

夜間はなるべく静かな環境を

「夜はできるだけ静かにしよう」と避難所の皆さんが思っていても、大勢の人がいるとどうしても寝言や歯ぎしり、咳払いや寝返りの音が気になります。耳栓なども利用してできるだけ静かな環境で眠るようにしてください。

こまめに体を拭いて足湯を

快眠するためには入浴することが望ましいのですが、無理な場合は体をお湯で拭いたり、また乾いたタオルで汗を拭きとって衣服を着替えるだけでも皮膚表面の湿度が下がって随分とすっきりします。そして、足湯をすることにより全身の血行が促されて入浴と同等の効果が期待できます。
またシャワーをする時は、神経が集まっている首の後ろ側を集中的に温めてください。体のコリや緊張がほぐれることが期待できます。

昼間は光を浴びて活動的に

日中は光を浴びてある程度活動的に過ごしてください。脳と体を適度に疲れさせたほうが、考え事をせずに眠りに就くことができます。

アルコールはNG

寝酒としてアルコールを摂ることは避けてください。睡眠中であっても酔いが覚める頃に脳が覚醒してしまい、アルコールの利尿作用も重なって度々目が覚めてしまうのです。アルコールは睡眠の質を低下させるのです。

不眠が続く場合は専門医に相談を

不眠が続いて辛い方は、我慢せずに専門医に相談しましょう。
医師に話を聞いてもらうことにより気持ちが楽になることが期待でき、治療薬も処方してもらえます。
避難所生活では薬の力を借りて眠ることも有効な手段です。入眠剤や睡眠薬は寝酒よりも習慣性が低く、体に悪い影響を与えることもありません。固定観念に囚われることなく利用するべきと考えられます。

まとめ

自然災害などのために避難所で集団生活を送らなければならない場合、周囲の会話や物音、普段の就寝時間よりも早い消灯などのために不眠に陥りやすくなります。
慣れない避難所で睡眠をとる時には、体と心の健康を維持して復興へと向かう活力を生み出すために、なるべく工夫をして少しでも睡眠をとるようにしましょう。

避難所での生活が長期に及ぶ際には、健康への影響が特に心配されます。そんな方々の健康を守るための睡眠に関する様々な工夫が、少しでも役に立つことを切に望みます。
被災者の皆さまが一日でも早く普段通りの生活を取り戻すことができることを心よりお祈り申し上げます。
厚生労働省のホームページに掲載されている避難所生活で健康に過ごすためにもぜひご覧ください。

蒲団屋へのお問い合わせや、体験会のお申込みはこちらのフォームから

お電話でのお問い合わせは、0800-200-1194(通話料無料)または、089-931-2355へご連絡ください。

このページのトップへ