by 渡部元吾
店づくりとまちづくりと杉ーー(5)
やっぱり杉ーー本物、お宝を生かす
蒲団屋の裏庭(店舗を立て替える前までは、見事な材で設えた茶室の庭で池もありましたが今は無くなり、現存するのは苔蒸した灯籠、手水鉢のみ)には、松山城を背に東の郭で約250m続くお宝、石垣(一説によると松山城最古の野良積みの石垣ではないかと言われています)があります。それを借景に店内から見えるようにし、さらに今回の景観整備(蒲団屋の商いの変革)にともない、「城」地域景観特性を生かした店舗外装としました。腰板、土間は御影石で、壁は柚肌仕上げ吹付けの漆喰風(予算が無かったので本漆喰は断念)。8角形の檜柱を用い、樹齢おそらく80年ぐらいの県内産の杉(太鼓削り/4.6m)をのき張りにし、2階の窓枠も木枠、一部8㎝檜角材で格子をつくり、一部檜の板張りに変えました。幅10m、棚7段の店内の棚も杉材でつくりました。(改装に当たっては伊予市のアトリエ A & A建築家・武智和臣氏に適切的確なアドバイスを受け、景観整備においても良き相談者になっていただき、感謝申し上げます)。
私にとって、味がない何も感じない既製品は使いたくありませんでした。安くても本物の質感を持つ材は、長年使えてリサイクルでき、環境にも優しい、流行にとらわれず、使い込むほどに味が出てきます。(店舗の什器は本来商品を引き立てるもので、主張をもたせてはいけませんが、蒲団屋はうまく融合していると、自己満足しています)。さらに杉は、その柔らかさや温もり、香りがなにげなく人の五感になごみを与えてくれます。それは人間社会以前から自然界に存在していたからでしょうか? 杉は生き続けています。店にいると杉の声が聞こえてきます。「パーン」「ミッシ」と音が響き、私に話しかけるのです。割れます、反ります、主張しています。思わず杉を手のひらで撫でてしまいます。愛着わく蒲団屋の杉達です